60までの自分磨き→60からも自分磨き(定年後)

50代後半からの日々を綴っています。60になり、また次のステージへ。

だれもが奇跡を胸に秘めている

林真理子氏の「奇跡」を読みました。
歌舞伎に興味があったので、あとは下世話な興味本位から。
主人公の舅さんのファンでした。
若いころの美しさといったら、もう、、、

図書館ではかなりの予約数でようやく私のところへやってきた本です。
週末にスラスラと読めて、待っていた割にはあっという間。
小説的に仕上げているかと思ったけれど、
しっかりモデルである女性の日記も公開されています。
恋するお二人はそれはそれは高尚でありお洒落であり美しい。
パリ、ブランド、パーティ、別荘、、、
お金と時間があれば、と思うが、実際のお二人には時間はない。
世界的な写真家と梨園の妻、それだけでも疲れ果てそうなのに、
逢瀬のために限りある時間を絞り出す。
女性の方は子供連れで、というから驚きだ。
そしてその子供を心から愛するエネルギー。
何しろこの子のためにすべてを捧げようと決め、
生涯子供はこの子だけにしようと弟妹を作らなかったくらいなのだ。
そしてまたこの子が良い子なのである。
幼いながらも、梨園の妻の苦労を感じ母の恋を誰にも言わずに応援する健気さ。


とにかく愛した愛されたのオンパレードである。
そして聡明な彼女は、元婚家に対しても終始「可愛がっていただいた」で通す。
元夫の女性関係はサラリと最小限に抑えており、
これもひとえに息子の将来を考えてのことであろう。
彼女は常に、皆さんのおかげ、皆さんが温かく二人の秘密を守ってくれた、
舅姑、歌舞伎界の皆さんもずっと可愛がってくれた、
私は梨園の妻も息子の母も全身全霊やり通し、
不倫相手と愛し愛されたんです、
まさに奇跡でしょう?
という記録を記しておきたかったのだろう。
元婚家には便箋8枚の手紙を出したという。
まっすぐな人なんだと思う。
精一杯生きたから、私は堂々と胸を張って歩める、と信じて疑わないからこそ
出版できたんでしょうね。
結局、離婚後は晴れてご結婚され、幸せに、、、
と思ったら、歳の差19歳は夫の死で終焉を迎える。
享年65歳。
50歳前で未亡人の彼女は、これからまた恋をするのだろうか?


林真理子氏は彼女の性善説的なところを危惧している。
そう人生はまだ続くのだ。
亡くなった最愛の人を思って生きるには長すぎるだろう。
実際、元夫も再婚し男児が生まれたようだ。
十分配慮した内容の本ではあるが、
不倫相手を父のように慕う息子の様子を記された本の存在は
どれだけ歌舞伎役者の面子を潰したことであろうか。
これから息子たちの襲名の時期にどう影響するのか?


恋愛は、誰もが奇跡と思うもの。
これほどドラマチックではないにしろ、
本にはならないだけで、
巷では誰しもが、恋すれがそれは奇跡、と信じてしまうものものだから、
歌舞伎ファンとしては、片岡仁左衛門を継ぐのは果たして誰か?

この本が鍵を握っているようにも思う。

多分違うだろうが。